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ハナムスビ オフィシャルブログ

豆料理のレストランを経て、ここ伊那谷で生活を一からスタート 自然の循環の輪に入れさせてもらえるうよう

土=人 土に還る

土は植物を養い、つけた実を分け隔てなく与えてくれる。
その深い慈悲を忘れ、ヒトは独占しようとしている、、、

サティシュ・クマールは新たな文明、幸福の追求には、
今一度、土に触れ、その無限の慈悲を見つめなおすことが必要だと説いている。



近年のDNA解析で、これまで見えなかった土のハタラキが分かってきた。
それは、微生物と僕ら生物は、もちつもたれつ、共に助け合いながら生きてきたという、
ごくごく当たり前の事実。

微生物というと、
その発見が感染症に始まったから、大きく悪いイメージが先行してきた。
それらを叩いたことでの恩恵もあったけれど、
すでにいたちごっこになって、耐性をつけてしまい抑えつけるのは無理だというのが共通認識、、、
で良いですよね?

そして、
地球から、土から搾取するだけのポイ捨てな経済活動。
資本はお金ではなく、あくまでも地球にある資源が担保になっていることをお忘れなく。
ハイパーインフレになったとき、ああ、食べ物が基本だな~と理解するようじゃ遅いです。

今こそ、
僕らは土を通して新たな物語を紡ぐことを求められている。

科学がリアルに突き付けているのだから、、、

土壌のリアル

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デビッド・モントゴメリー
「土、牛、微生物」

土壌から見えてきた大きな問題、その解決法を示している。
ただの土壌問題本ではありません。

環境問題をはじめとした、多くの問題解決に迫れる可能性があり、
とにかく畑に出て実践しよう、そこからナラティブを語っていこうとヤル気にさせる、
光のある本です。

前著「土と内臓」も秀逸で、
やはりそうだったのか!と膝を打つばかり。
壮大な宇宙の謎に迫るような、ミクロの謎の解明でした。

土壌における、植物の根と微生物の共生関係。
例えば根は滲出液(炭水化物など)をだして、それを餌に微生物をおびき寄せコロニーをつくってもらい、
微生物はその見返りとしてリンなど、植物が直接吸収できないものを提供し、外的が侵入するのを助け、
それが水はけがよく保水性もあるという土の団粒構造となり、
お互いのベストな環境を共生で作り上げている。

実は、
人の腸内でも、植物と微生物の共生関係と同じような生理システムが働いていたという話。

小腸のひだから分泌される浸出液が微生物のコロニーを生成して、
その見返りにビタミンや人が自ら作れない栄養素をお返しし、
外的から守るための防衛をしている。

動物は腸で、植物は根で、
外から入ってくる栄養を吸収し、それだけでは成り立たないので、
微生物、菌類にアウトソーシングすることで、足りないものを補っている、、、

つまり、植物であれ、動物であれ、単独では生きられず、
このように相補的に足りないピースを埋めあいながら成り立っているのが生のシステムなんだと
この本は教えてくれました。

さて、
「土、牛、微生物」

ここでは、地球規模でおきている土壌崩壊が収量悪化をもたらし(すでに起こっている)、
もはや2050年に100億人を抱えるだろう人口を養うことができないと警鐘を鳴らしています。

原因は耕うんと、化学資材(農薬、肥料)にあり、
有機農法でも耕うんすれば土壌は荒れる。
これは、近年の慣行農法✖有機農法○みたいなロジックではなく、
収量が上がらず、土壌の有機質含有量が下がってしまうのは、
地表近くに微生物がいないからで、それは耕すからだと生物学的な観点からつまびらかにしている。

慣行農法はさらに殺菌し、窒素、リン、カリをすきこみ、
耕された土壌は表層が硬くなり、その成分のほとんどは川に流れ、海に滞留する。
メキシコ湾では膨大な化学物質が流れ込み生態系に影響を与えている。

むき出しの地表では風が有機栄養素をすくい取り、
砂漠化したように土埃を吹き飛ばしている。
伊那谷でも強風があれば、霧に包まれたように土埃のカーテンができる。
それは10年以上前ノリさんの田んぼで学んでいたときの千葉も同じだった。
アメリカは規模が違いそうだけれど、同じことが起きているという。

そこは微生物にとって快適な環境ではなくなる。

規模を拡大して単一作物を作れば作るほどに持続不可能となっていくのはデータによって明らかだ。
どんなにカンフル剤を打ってその場は持ちこたえられても、
土壌は荒れ、大量のカンフル剤は土壌から流出して川、海を汚染する、、、
はたしてそのまま子どもにバトンタッチしていいものかどうか、、、

土壌問題は、気候問題のように感覚として分かりずらいから、
問題が定義されにくいけれど、この土壌崩壊は喫緊に対処すべき課題だと作者は言っている。

その解決法は、不耕起、輪作にあり。

作者は世界中の、何十年と不耕起栽培を行っている農家を訪ねまわり、
その成功例を要約している。
慣行農法より単位当たりの収量を上げ、
さらにエネルギー使用、農薬も減って経費があがる、、、

皆がやっていたことは、
不耕起栽培で、被服作物(クローバーのような低く成長する草)を育て、
かつ前年に作った作物をそのまま朽ちるに任せるように畑に残す。
そして同じ作物を育てないで輪作する。

つまり、土を裸にせず、常に草でおおわれているので水分量が確保されて多くの微生物が育つ環境になる。

実際このムーブメントは同時多発的におこっている。

実践家が未来の農法として地道に広めているからだ。
ただ、難しいのはやり方が画一的ではないこと。
その土地の風土、気候条件によって人も植物も生き物の生育は違う。
それは微生物も同じこと。

観察眼が問われる。
自然のハタラキを嗅ぎ、語りかける必要があるようだ。

畑のコスモスは、それをいただく人の腸内のコスモスにもなる。
身土不二
はからずも先人の直感した言葉が科学の解明によって明らかにされた。
僕らはもう、分断や叩いてなくすという魔法の杖が使えなくなっている。

土と腸内は不可分で、
微生物というパートナーたちと、尊重し、良質な関係を築くことができるかという、新たなフレーム。

世の中はテクノロジーの進むに任せているけれど、
ここで一つ立ち止まって土にふれることは遠回りではない。
目では見えない世界がようやくわかってきた今、
この近隣者との関係を科学を取り入れながら創造していくことに明るい未来が見えてくる。

詳しくは割愛するけれど、
この農法でCO2も土中に貯蓄でき、脱炭素も実現できると書かれている。

隣の畑も地力が落ちてきたので、
今年から不耕起を始めよう。

近隣の仲間たちといい関係をきずけるように。