いくつか本を読んだので分けて紹介します。
だいたい、アメリカ発で
ハリウッド~
セレブ~
なんてキャプションついていたら話半分で聞いたほうが良いかもしれない。
そもそも健康って何?
どの本もそれを定義しない。
何ですか?
テロメア(遺伝子の端にあるキャップのようなもの。命の回数券と呼ばれる)がきちんと働いたとき、
人間の生物学的寿命は120歳とされる。
あるいは、腸内細菌がもし存在しなかったとしても
(善玉菌も悪玉菌も腸内に存在することで寿命を縮める)
寿命は120歳とされる。
およそ120歳の限界で、日本人の寿命、
90歳まで生きられるのだとしたら、
4分の3、
つまり100点計算で75点は取れていることになる。
これ、かなり成功しているのでは?
だったら今の日本の健康地域にすんでいる人たちの食生活をまねるだけで十分なんじゃないか?
あとは健康寿命を延ばすことに主眼をおけばかなり健康を達成できるのでは?
そんな疑問もわく、、、
いやいや、ことはもっと深刻な話だった。
とくにアメリカ発の健康本は、すでに常軌を逸している。
どこかおかしい。
それすら気づいていない、、、
一冊はダイエット本だから当然なんだけど、
他の健康本もいかに痩せるかということが随所に、
そして行間に表れているのだ。
健康=痩せられること
ここに主眼が置かれている。
僕が想像するよりもはるかに多くの人が肥満、
そして肥満による現代病に苦しんでいるのだ。
ここ10年ほど糖質制限、というのが流行っている。
全ての悪は糖質にあるというもの。
糖質制限、断糖、ローカーボ、グルテンフリー(こちらはグルテンというたんぱく質が悪玉に挙げられているのだけど、どれ読んでも糖質制限とセットになっている)などなど、異性化糖など化学的な糖だけでなく、ショ糖、果糖、でんぷん、あらゆる糖が目の敵にされている。
要するに現代病、糖尿病やガンなどは古代には見つからず、糖を摂るようになってから多く発現しているので、すべて断てば、そんな病気にはかからないぞ、ということだ。
このブログでよく書いているように、僕は進化から病気や身体の痛みを診るのが大きなところでは正しいと思うので、現代病の原因として糖の摂り過ぎは正解だと思う。一つの原因として。
なぜか。それは身体の消化システムがどう進化してきたかを見れば一目瞭然だ。
人は人として誕生してから、ここ2・30年前くらいまでず~~~~っと飢えと闘ってきた。いつ何時食べられなくなるか、狩りが成功するとも限らない、冬になれば当然食料が底をつく、、、
何百万年とその闘いを乗り越えてきて、今の僕らがある。
それはインシュリンという血糖を下げるホルモンが、血糖を上げるホルモンがいくつかあるのに対して一つしかないことからも簡単に窺い知れる。
飢えの時は、当然食料が入ってこないから、いかに血液の糖分を(エネルギー)を上げるかに腐心する。血糖を上げるために体内は必死だった。それに比べ、血糖を抑えることは(食料が豊富にあり過ぎてしまう状況)滅多にないからインシュリン一つだった。
つまり、生命として生まれてこのかた、飽食の時代は今が初体験だということ。でもって糖質が入り過ぎてしまうからインシュリンでは処理できなくなって、糖尿病、高脂血症など現代病が生まれている。
現代病は主に糖質を中心とした食べ過ぎ、これが第一に来る。身体のシステムは二足歩行になってからバージョンアップしてないのだから、この急激な変化に処理能力がついていけない。だいたい30年前の食を比してみれば多くなったものがわかる。油も一つ。揚げ物、炒め物、ドレッシング等、近年消費量が急激に増えた。オメガ6の油が悪いからオメガ3も摂ろう、とよく言われるけれど、大切なのは油物を減らすことなのではないかな。
そして第二が、身体の動きによる消費。エネルギーが入ってきたにもかかわらず燃やしていないことも現代病を語るうえで重要だ。デスクワークで長時間座り、脳だけ高回転でまわしていると当然糖分がほしくなる。これは悪循環だ。
この、食べ物の摂取過多、動きによる消費減は、身体システムのプログラムには組み込まれていないのだから、当然バグを起こす。身体システムはいまだ、飢えと食料を得るための多大な動きをもとにできている。食料が多く入ってくればため込もうとするし(中性脂肪)、動かなければ血流が悪くなり低体温を引き起こす。
こうして進化からたどっていけば何が今必要かは明らかなのだけど、なかなかそこが問われないのは健康産業に巨額なお金が動くからだろう。
答えは「食べるの減らして動け!」なのだから。
お金にならない。
第三の要因、最近言われていることとして、清潔になり過ぎたことが入ってくる。これは進化生物学(今一番熱い!)が明らかにしているところで、近代以降のウイルスとの闘いにおいて、僕らの身体に有用な菌までをも抹殺した結果、生理的均衡が崩れ、自己免疫疾患が多発しているというのだ。
この三つの要因から現代の健康を組み立てていくのが理に適っているはずだ。
まずはここを抑えたい。
で、この本。アメリカシリコンバレー発というキャプションがついている。

プログラマーが食の成分を徹底的に調べ上げて、何が身体にいいのか、どういう食べ方をすればいいのか、自分への実験をもとに書かれている。
ダイエットと見出しがついているものの、健康と食はこれだ!的な強い物言いなので、著者的には完璧な健康食という触れ込みで前面に押し出している感がある。
そして売れているらしい!
ムムム、、、
読了して最初についた一言は、健康よりも健全か。
ガチで健康を謳っているにもかかわらず、まったくもって不健全なのだ。
糖質を徹底的に削って、ケトン体を摂れば良いというものが流行りつつある。これは身体がエネルギーとして使うガソリンを糖質から脂質にするというもの。糖質は優先的に燃えて身体に悪さしてしまうけれど、脂質から得られるケトン体というガソリンは効率が良く、身体に悪さしない、、、
だから燃やすガソリンの種類を変えよう!と。
著者は果糖を目の敵にして(果物タベルナ!と)、穀物を徹底的に削って、ケトン体を燃やすために牛肉、特に草を食べて育ったグラスフェドの牛肉を推している。野菜は良し悪しをランク付けして多く食べることもうたっている。
食べ方の時間も詳細に書かれている。
そして、
「ほら、僕はこのグラスフェドのお肉をたくさん食べて4000カロリーを毎日摂っているけれど、ダイエットに成功して、動かなくても筋肉がついているよ!」
と随所にこの食事療法の結果を喧伝している。
まてよ。
と僕はなる。
まず、4000カロリー食べ過ぎでしょ。
そう、最初に書いたようにこれは僕が想像している以上にアメリカ人は肥満に苦しんでいるのかもしれない。いや、そうなのだ。この本によく登場するのが、
「この食べ物は満腹中枢を刺激しない」という文脈。果糖はとくにその傾向があるらしい。
要するに食べてもすぐお腹が減るよ、だからダメだよ、という。
それはダイエットには有効かもしれないけれど、もともと健康な人はどうなの?と疑問がわく。
アメ車理論というのがある。
僕が勝手に呼んでいるだけだけど、まだアメリカはアメ車だなと。
アメ車は車体が大きくて重いからスピード出すにはとにかく大きい排気量のエンジンを積もうというもの。これがアメ車理論。軽い素材を使って車体の重量を減らせば排気量も抑えられる、とはならない。
だからローファット(低脂肪)、ファットフリーなどの食品が出れば、それだけたくさん食べられるという感覚になる。ちなみに、ローファットでは結局肥満は減らなかった。そして最近脂質悪玉論が覆され、脂質は長い牢獄の生活からやっと解放されて、逆に糖質が牢獄に入れられたのだ。人間のサガなのか、何かを悪者にしないと自分を保てない、、、ここにも不健全が宿る。
まあ、グラスフェドで糖質を摂らないからと言って、たくさん食べ過ぎです。
次回書くけれど、ケトン体はあくまでも飢えの状況で効率的に働くシステムであって、糖質を最小限に抑えてケトン体をたくさん摂れる環境なんて、そもそも進化の過程では初めてのことで、ホントにいいのかどうか分からないはずだ。
そして僕が一番不健全だと思うのは、持続可能性が全く担保されていないことにある。
僕らは食に関して、工業製品でないことと、その生産過程が持続可能かどうかは全体の中の個として、しっかり考えることも健康において重要だと思っている。
というのも、グラスフェドの牛肉を90億人いる地球上の人口の何パーセントが食べられるというのか?ここを問いたい。そうなると穀物で育てるより広大な牧草地が必要になり、今よりも
激しくアマゾンを切り拓いて、地球全体を牧草地にしても足りないのではないだろうか?反芻するからゲップはたくさん出て大気汚染になるし、ウンコがそこら中に落ちてるで、いったいどうするの?
ここに最大の不健全さが宿る。
一部のお金がある人だけが手に入れられる妙薬。これを食べていれば助かる、的な思想は選民思想と何ら変わらない。例えばオーガニック食品で少し値段がするとしても、それを食べることによって、いつか全世界がオーガニックに変わる、ということで食べ続けるのはありだと思う。オーガニック食品が全世界に広がる可能性としてはあり得るだろうから。グラスフェドの牛肉はどう考えても無理でしょ。
健康や食はとにかく尖りやすい分野だし、極端なことをいうことが逆に受け入れられる傾向が近年あるように感じる。「医者にかかるな~」とか「ガンは治さない~」とか。まあ、骨折ったら整形外科に行ってくださいよ。万能でないことは確かで、それは昔からそうだったんだから確率で選ぶかどうか決めればいいだけで、極端になる必要はないのだけど、あまりに信じていたものだから逆に振れるのかもしれない。
もっと冷静になろう。
食は生と死と一緒で、食べられることの裏側に常に飢餓が潜んでいることをお忘れなく。
あれ良い、これ悪いで素材をこねくり回すのでなく、まずはありがたく頂こう。